楽園の炎

しん、と沈黙が落ちる。
憂杏はナスル姫の剣幕に、ただ茫然とするばかりだ。

しばらくしてから、皇太子がおもむろに口を開いた。

「憂杏殿。ナスルの気持ちは、わかってもらえたかな?」

呆けていた憂杏は、やっと我に返ったように、慌てて頭を下げた。

「あ、は、はい・・・・・・。そうですね・・・・・・。いえ、わかってはいるのですが・・・・・・」

困惑気味に、ぼそぼそと言う。
皇太子は、立ち上がっていたナスル姫に、座るよう促した。

「ナスル、お前の気持ちは、私もわかっているし、もちろん憂杏殿も、よくわかってくれているよ。しかしね、お前を想えばこそ、簡単にお前をもらい受けるわけにはいかんのだよ。そうだな?」

しょぼんと椅子に座ったナスル姫の肩に手を置いて、皇太子は憂杏を見た。

「・・・・・・何故ですの? わたくしは、憂杏には相応しくないのですか?」

ナスル姫の大きな瞳から、大粒の涙がこぼれる。
憂杏が慌てて、声をかけた。

「そ、そんなこと、あるわけないだろ。俺はお姫さんに相応しくないが、お姫さんが相応しくないなんてことは、絶対にない。ああ・・・・・・あのな、うう、そのぅ・・・・・・。あ、後で、ちゃんと言うよ。ここでは、さすがに・・・・・・」

心底困ったように、怪しく視線を彷徨わす憂杏に、ナスル姫は不安な目を向ける。
が、皇太子は、くくっと笑いをこぼした。