楽園の炎

朱夏と憂杏がダイニングに入ると、不思議な席順になっていた。
一番奥の上座に皇太子が、向かって左に夕星が、夕星の向かいにナスル姫が座っている。

自分の着くべき席がわからず、入ったところで立ち尽くしていると、ナスル姫が声をかけた。

「いらっしゃい。朱夏はお兄様の横へどうぞ。憂杏はここよ」

ぽんぽんと自分の横を叩き、にこにこと言う。

「えっと、じゃあ失礼します」

さすがに渋る憂杏を、どかっとナスル姫のほうへ突き飛ばし、朱夏は夕星のほうへと歩み寄った。
そこで朱夏は、夕星がずっと自分を、じぃっと見ていることに気づいた。

「綺麗だねぇ。見違えた」

朱夏が隣に座ってから、しみじみといった風に、夕星が呟く。
途端に朱夏は、真っ赤になった。

「ええっと、あの、ち、父上が、母上のお衣装を出してくれたの。あたし、リンズって動きにくくて好きじゃないんだけど、母上のは凄く着やすくて、びっくり。えへへ」

誤魔化すように一気に喋り、最後は笑って本当に誤魔化す。
夕星は、ふと真顔になった。

「朱夏の母上は、亡くなってるんだっけ」

「うん。あたしを産んで、すぐに。だからあたし、桂枝に育てられたのよ。あっそういう意味じゃ、あたし、憂杏の妹みたいなものかも」

「弟だろ」

前方からの突っ込みに、ぎっと朱夏は鋭い目を向ける。
が、はたと我に返って慌てた。
皇太子の存在を忘れていた。
皇太子の弟である夕星とも、普通に口を利いてしまっていた。