楽園の炎

「あ、これ? 父上が出してくれたの。母上のだって。ていうか、葵、何驚いてるのよ。あたしのこういう格好、葵は初めてじゃないでしょ」

葵のお付き武官として、公式の場に出たことは何度かある。
その際には、ちゃんとしたリンズを着ていたので、葵の前でリンズ姿を披露するのは、今が初めてではない。

「そうだけど。でも、今までのとは違うよ。凄く似合ってる」

「そう? ありがとう」

やっぱりちょっと照れくさそうに、朱夏はぽりぽりと頭を掻いた。
胸元には、葵からもらったスタールビーが輝いている。
葵はその首飾りに、柔らかい視線を向けた。

「でも、憂杏のそういう格好は、初めてかな。昔は憂杏も、そういう格好、してたんだろう? 何せ、炎駒殿についてたんだから」

ひょいと顔を上げた葵に、憂杏は難しい顔のまま頷いた。

「まぁな。それなりの格好はしてたが。何年前の話だよ。お前らの記憶にゃ、ねぇだろうが」

「だから、初めてだって。そうそう、皇太子様も、結構砕けたお人だよ。夕星殿の兄上だしね」

笑いながら、葵が思い出したように言った。

「皇太子様、憂杏のことも、なかなか評価してらしたよ。‘あの者は、本当に今は商人としてしか、生きておらんのか?’ って不思議そうに言ってらした」

「あ、じゃあナスル姫様のお相手としても、問題なしって思ってくださったのかしら」

「だと思うよ。僕からしても、憂杏は頼りになる人だと言っておいたし」

だから、頑張りなよ、と憂杏をからかい、葵はじゃあね、と朱夏の頭を軽く撫でて歩いていった。