「そうか? 入れたんだから、いつかは出られるだろ。俺はほれ、この水の精霊が、助けてくれたし」

ぶは、と憂杏が吹き出す。

「み、水の精霊? もしかして、朱夏のことか。お前、どういう目してるんだよ。このじゃじゃ馬が、精霊って・・・・・・」

ぐっと腰に差した剣の柄を握った朱夏に、憂杏が慌てて手を振る。
が、笑いは止まらず、涙目になりながら、大きく肩を揺らしている。

「い、いやいや。うん。お前も大人しくしてりゃ、それなりに可愛いぞ。はは、確かに精霊にも、いろいろいるしな」

「やっぱり、微妙に失礼ね。全く」

憮然と言い、朱夏はぷい、とそっぽを向いた。
ふと視線を感じて目を戻すと、男の漆黒の瞳とぶつかる。
男は、じっと朱夏を見つめた後、またにこりと笑った。

「朱夏と言うのか。俺はユウ。そうだ・・・・・・」

自己紹介をしつつ、思いついたように男は憂杏を振り返ると、朱夏を指差した。

「なぁ、ちょいと朱夏を貸してくれよ」

意外な申し出に、朱夏はもちろん、憂杏も少し驚いたが、すぐににやりと笑うと、憂杏はユウが出している品を指差して頷いた。