楽園の炎

「無謀・・・・・・。確かに無謀だわ。想像しただけで、自分で怖気が走る」

「そんなことないぞ。お前、自分で思ってるより、随分可愛いぜ」

しょぼんと項垂れる朱夏に、夕星が笑いかけた。
歯の浮くようなセリフでも、夕星はさらりと言う。
言われたほうが、照れてしまう。

「ん~、まぁなぁ。綺麗ではないが、まぁ可愛い・・・・・・かな」

じろじろと朱夏を見ながら言う憂杏に、ナスル姫は、びしっと指を突きつけた。

「もう、違うわよ。朱夏は、格好良いの。可愛いなんて表現、弱々しいわ。美しいっていうのかしらね」

手放しに褒められて、朱夏は居心地が悪くなる。
もぞもぞと落ち着きなくしていると、ふと内宮のほうから歩いてくる、厳めしい男性に気づいた。

「あ・・・・・・あの人は。えーと、確かぁ~」

呟いた朱夏に、皆の目も男に向く。

「おや、アシェンじゃないか」

ああ、そうそう、と、朱夏は立ち上がって頭を下げた。
そんな朱夏に、アシェンは慌てて駆け寄る。

「これは朱夏姫。ご無礼を」

ささっと素早く、朱夏の足元に跪いて、深く頭を垂れる。

何が無礼なのだろう、と思ったが、どうやら朱夏に先に挨拶させてしまったことが、無礼を働いてしまった、ということらしい。
朱夏からしたら、宗主国の皇太子の側近、という立場のアシェンは、己より上の人間だと思うのだが、アシェンの中では朱夏はすでに、夕星皇子の婚約者なので、敬うべき存在のようだ。

「相変わらず、お堅いなぁ。そんなにかしこまらんでも、いいっつーに」

軽く言う夕星に、とんでもないというように、アシェンは頑なに頭を下げたままだ。
夕星も、いつものことなのだろう、しつこく突っ込むことはせず、腰を浮かす。

「で、お前が兄上から離れてここに来たということは、兄上のお呼びなのか?」

「あら、葵王様と一緒にいらっしゃるんじゃないの?」

夕星とナスル姫の問いに、アシェンは頷いた。