楽園の炎

「そんなに怖かったのか。そうだよな。俺もちょっと、認識が甘かった。すまん」

夕星が、ナスル姫に頭を下げた。

「お兄様には、お仕事がありましたもの。あまりつきまとっては迷惑だということぐらい、わかってましたから、しょうがないですわ。わたくしは自分でも怖かったですけど、お兄様のことも、心配でしたし」

「・・・・・・ま、あいつの標的は、俺でもあるわけだしな」

ふと、ナスル姫は顔を上げて夕星を見た。
不安そうな顔になる。

「お兄様。わたくしが憂杏のところに行ってしまったら、矛先はお兄様一人になるのでは?」

朱夏も、はっとした。
悪くしたら、舌なめずりをして狙っていた獲物に逃げられた反動が、全て夕星に来るのではないか。

が、夕星はぽんと朱夏の頭を叩いて笑った。

「大丈夫だよ。あいつに人望はないし。万が一ナスルの代わりが朱夏になっても、遠慮無くぶちのめしていいぜ。他の兵士はともかく、俺直属の近衛隊は、俺の命令があれば、アリンダよりも、命令を重視する。俺の正妃のことは、それこそ命がけで守ってくれるさ。ナスルにも、何人かつけてるんだが」

「確かにあのかたたちは、信頼していますけど。わたくしについているかたは、お兄様の隊にしては珍しくお堅いですから、つかず離れずなんですもの。姿が見えないこともありますから、やはり不安です」

「・・・・・・お前はやっぱり、お子様だよ。べったりくっついておかないと不安なんだったら、憂杏はおあつらえ向きだな」