楽園の炎

兄妹のやりとりを聞きながら、そういや前に、ナスル姫は夕星のことを『じゃじゃ馬』と言っていたな、と思いつつ、朱夏はくすくす笑った。

「朱夏、お兄様の言うとおり、気にすることはありませんわよ。強い朱夏は、格好良いもの。心配しなくてもお兄様のほうが、よっぽど暴れ馬ですから、大丈夫よ」

「じゃじゃ馬から暴れ馬に格上げかい」

「格下げだろ」

夕星の呟きに、憂杏が突っ込む。
そして、一つ息をついて、憂杏はちらりとナスル姫を見た。

「お姫さんはさぁ、本気で俺と一緒になりたいのかい? 俺は貴族でもない、ただの商人だぜ。庶民だよ。旅をしながら暮らしてるから、決まった家もない。身内は母親一人だ。宮殿で大勢の侍女に傅(かしづ)かれ、多くの家族と暮らしていた今までとは、全く違う環境だぜ。そうそう贅沢も、させてやれないし」

「おっさんだしねぇ」

ぼそりと朱夏が付け加える。
憂杏は、じろ、と睨んだが、渋い顔で頷いた。

「そう。歳だって、俺は若くない」

「いいわよ」

何を今更、というように、ナスル姫は、ふん、と盛大に鼻を鳴らした。

「若くて地位も財産もあるかたが良いのであれば、葵王様を選びますわ。元々わたくしは、葵王様とのお見合いに来たのですし」

「それはそうだが・・・・・・」

珍しく憂杏が押され気味だ。