楽園の炎

「昔から野生児だったものな。葵も朱夏には敵わんし、まぁ、だからこそのお付き武官なんだろうが。それだけが取り柄みたいな奴だったし」

憂杏が、やっといつもの調子で軽口を叩く。
朱夏はじろりと、憂杏を睨んだ。

「ふふ。おいユウ、お前も妙な奴に惚れたもんだな。こいつにククルカン皇家のお妃なんて、務まるとは思えんぞ。野生児のお妃なんて、お前の趣味を疑われそうだ」

ぐ、と朱夏は押し黙る。
確かに夕星は、第三皇子とはいえ、大国ククルカンの、れっきとした皇子であり、政治を司る宰相である。
普段の夕星からは全くといっていい程想像できないが、途方もない程位の高い人間なのだ。

夕星に嫁げば、確かに朱夏は、妃ということになる。
聞き慣れない単語に、やはり頭はついていかないが、いつまでもそのようなことは、言ってられない。
少しは大人しくしないと、憂杏の言うように、夕星の品位まで落としてしまう。

「おや、言い過ぎたか。すまんすまん。いやでも、ちょいと心配なのさ」

珍しく憂杏が、謝りながら黙り込んだ朱夏の頭を撫でる。

「ん、でも、憂杏の言うとおりだなって。ちょっとは大人しくしないと、ユウに迷惑がかかるものね」

頭を撫でられながら、朱夏は素直に言った。
が、隣で当の夕星が、軽く笑い飛ばす。

「構うもんか。朱夏だって、全く礼儀を知らんわけじゃないんだし。近衛隊の奴らだって、俺がそんな人形みたいに大人しい女を好きになるとは、思っちゃいないさ。大体皆、ナスルを見てるから、じゃじゃ馬には慣れてる」

「じゃじゃ馬っていうのは、お兄様のようなことを言うのです。わたくし、そんなお転婆ではありませんわよ」

「そうだな。元気が良いと言っておこうか」

「同じ意味でしょっ」