楽園の炎

「憂杏!」

ナスル姫が立ち上がり、広場に降りてきた憂杏に駆け寄った。
そのまま、遠慮無く憂杏の胸に飛び込む。
大柄な憂杏に、小柄なナスル姫が飛びついても、差がありすぎて全く違和感がない。

---蝉が大木にとまったみたいに、自然だわ---

何気に失礼なことを思い、朱夏は二人を眺めた。
男二人も、妙に感心したように、何も言わずに憂杏とナスル姫を見ている。

憂杏はちょっと照れたように、腕の中のナスル姫の肩を抱いて、皆のほうへと歩いてきた。

「・・・・・・やっぱり、もったいないわぁ。お似合いといえば、お似合いなんだけど。ナスル姫様みたいな可愛い女の子が、何で憂杏のようなおっさんに惹かれたのかしら」

しみじみと言う朱夏に、憂杏がげんこつをお見舞いする。

「痛ぁいっ。だってそうじゃない。憂杏がナスル姫様をお慕いするならわかるけど、ナスル姫様のほうが、憂杏をお好きなのだもの。信じられないわよ」

「憂杏も、わたくしを想ってくれてるでしょ? 同情じゃないんでしょ?」

皆と同じく、木陰に座ろうとしていた憂杏が、ぴき、と固まる。
いまだ憂杏に引っ付いたままのナスル姫が、至近距離から覗き込む。

「・・・・・・ああ」

ぼそ、と呟いた憂杏に、ナスル姫は、きゃっと呟き、嬉しそうに笑って、ぴょこんと彼の横に座る。
憂杏は誤魔化すように、どかりと腰を下ろした。

「で? 兄上は、何か言ってたか? ていうか、お前もそんな格好、するんだな」

夕星が、憂杏をまじまじと見ながら言った。

いつもは王宮に来るときも、特に正装することなく、普段の商人の格好だ。
が、さすがに今日は、それなりの格好をしている。