楽園の炎

「あ、じゃあ桂枝も? 憂杏のお母さんだもの、参列したいんじゃない?」

朱夏の言葉に、何故か葵と夕星は微妙な顔になる。
もしかして、桂枝の身分では、ククルカンでは参列できないのだろうか、と思っていると、葵が眉間に皺を刻んだまま、口角を上げた。

「そう・・・・・・かもしれないけど。桂枝殿、式の間中はらはらしっぱなしで、身体もたないんじゃない? 憂杏に嫁ぐとはいえ、式はちゃんとした皇家のものでしょうし。参列者も、それなりの方々でしょう? そんな中で、あの憂杏が長時間大人しくしていられるかなぁ」

「確かに。まず、憂杏がちゃんとした格好をするかな。いや、するだろうが・・・・・・くくっ、似合うかなぁ」

肩を震わす夕星に、ナスル姫が飛びかかる。

「もうっ! 何が言いたいんですのっ。ご自分のお顔がちょっと良いからって、調子に乗らないでくださいなっ!!」

夕星の胸倉を掴んできゃんきゃんと吠えるナスル姫に、朱夏も葵も呆気に取られる。
飛びかかる辺り、やはり夕星の妹だ。

「ははっいやいや、お前が良いならいいんだよ。見る目もあると思う。お陰で面白いモンが見られるわけだし」

フォローしつつも相変わらず失礼なことを言い、夕星はナスル姫の頭をぽんぽんと撫でる。
気づけば、葵までもが顔を背けて肩を揺らせていた。
夕星の言う‘面白いモン’を想像したのだろう。

「葵王様まで~っ。皆、失礼ですわっ! いいですわよ、憂杏の良さをわかってあげられるのは、わたくしだけってことですものねっ」

とうとうナスル姫は、ぷん、と顔を背けてしまった。
が、不意にその顔が、ぱっと明るくなる。
皆がナスル姫の視線を追うと、内宮のほうから、大柄な影が出てきたところだった。