楽園の炎

「だからさ、余計慎重になってしまう。欲しいけど、傷つけたくないし」

朱夏を抱いたまま言う夕星に、こくんと頷き返す。

「憂杏は、明日兄上と会うんだよな。多分、大丈夫だと思う。憂杏はしっかりしてるし、男気もある。兄上だって、一角(ひとかど)のお人だ。憂杏の人となりは、見抜けるだろう。むしろ心配なのは、ナスルのほうだよ」

「ナスル姫?」

ちょっと意外に思い、朱夏は夕星にくっついたまま、少し顔を上げた。

「今回の話で、ナスルは多分、宮殿から出るだろ? 憂杏がナスルの元に入るんじゃなく、ナスルが憂杏の元に行くだろう。となると、市井の生活だ。そんな生活、したこともない奴だぜ。続くかな?」

風呂場で朱夏が考えていたことと同じ心配事を、夕星も口にした。

「あたしもそれは、考えた。でもアル・・・・・・あたしの侍女ね、に聞いたら、案外大丈夫なもんだって。売られちゃったりしたら、嫌でもお世話する側になるわけだし。それにさ、そう考えたら、ナスル姫は好きな人の元に行くわけだから、頑張るでしょ。身の回りのことは、憂杏も自分でできるし。できなかったら、憂杏にやってもらえばいいのよ」

「お前は?」

不意に問われたことに、朱夏は首を傾げた。