「ね、葵王様。ここにいらっしゃる方々は、重臣でしょうから仕方ないんでしょうけど、皆それなりに、お年を召してらっしゃいますわね。わたくし今回は、たっての願いで、ほとんど私的にこちらに伺ったものですから、もしかしたらこちらのかたと、あまり親しくなれないような気がしておりましたの。よろしければ、この朱夏さんと、是非とも仲良くなりたいわ」

「それは、願ってもない。どうぞ、朱夏も同年代の娘の中では浮いてしまって、あまり友達もいないでしょうから、そんな者でよければ、遊んでやってください。ああ、でも。かなりのじゃじゃ馬ですよ」

にこやかに答える葵を、ぎっと睨み、朱夏はナスル姫を見上げた。
ナスル姫は、朱夏に微笑みかけると、ぐい、と顔を近づけた。

「よろしくね。わたくし、じゃじゃ馬には慣れてましてよ」

その、いかにも悪戯っぽい物言いに、朱夏はこの姫が、ただ者ではないような気がした。
ただ者ではないというか、見た目通りのおしとやかな少女ではないのかも、という直感だが。

「ところで、ナスル姫様。何故ほぼお忍びでいらしたのです? 第二皇女のナスル姫といえば、ククルカン皇帝が、最も大事にされている姫君だとお聞きしましたが」

朱夏の問いに、ナスル姫は、またぐるりと室内を見渡した。

「全くのお忍びというわけでは、ないのだけど。わたくしが正式に、こちらに来ようと思ったら、それこそ、すわ戦かっていう大軍が、くっついてくるでしょ? それじゃ、申し訳なくて。今回の訪問自体、結構急に決まったことだし、あまり大人数だと、受け入れるこちらにも、負担が大きいでしょう。だから、わたくしの私的な訪問ということにして、人数をできるだけ減らしたの」