楽園の炎

言われて朱夏も、あはは、と笑った。
そういえばそうだ。
考えてみれば夕星だって、れっきとした皇子のくせに、何日も一人で暮らしたりしている。

「そっか。ま、あたしとかユウとかは、あんまり参考にはならないようにも思うけど。そうね、ちょっと安心したわ」

ね、と桂枝に笑いかけ、朱夏は窓に目をやった。
月が少し傾いている。

「あ、いけない。えっと、そういえば父上は? まだ戻られないけど、遅くなるのかしら」

皇太子の様子やナスル姫の様子は知りたいが、この時刻から若い娘が出歩くのは、決して褒められたことではない。
朱夏の場合、いまさら、という気もするが、昔はともかく、今は内宮の、父の元にいるのだ。
父親の前で、夜中にふらふら出歩くのは、さすがに朱夏も気が咎める。

しかも、会いに行くのは男なのだ。
まるで、逢い引き・・・・・・。

そこまで考えて、朱夏は思わず真っ赤になった。
別にそんな甘やかなことではなく、ただナスル姫と憂杏のことを知りたいだけだ。

でも、ここ数日、二人きりで会うことはなかったし、この時刻なら周りに誰もいない。
状況的には、逢い引きにもってこいである。

どう言い訳しようかと、一人もじもじしていると、アルがにやりと朱夏に笑いかけた。

「・・・・・・逢い引きですか?」

ずばりと今しがた考えていた心を読まれ、どっきん、と擬音が部屋に響いたかと思うほど、朱夏は驚いた。
狼狽えようが、モロに顔に出る。