楽園の炎

いきなりの質問に、葵は首を傾げた。
濡れた手を振りながら、夕星が振り返る。

「今回のナスルとのことは、お流れになったじゃないか。朱夏も、俺がもらう・・・・・・いや、これはまだわからんが」

「わからない? 朱夏が、断るはずないですよ?」

素直に言う葵に、夕星は、そうだといいがな、と呟き、話を戻す。

「こう言っては失礼かもしれんが、そういう対象の女が、全員いなくなってしまうわけだろ? 葵王の傍にいる女子(おなご)といえば、あとは侍女ぐらいか? ま、知らんだけで、貴族の姫君とか、内宮には、いるのかもしれんが」

夕星の言葉に、葵が考える。
確かに、内宮に部屋をもらっている貴族の娘もいる。
が、そのような娘に興味のなかった葵は、どういう貴族の娘がどれほど内宮にいるのか、さっぱり知らないのだ。

「・・・・・・そうですね。重臣の娘は、大抵内宮に部屋を持っていると、聞いたことはありますが」

いかにも興味なさそうに言う葵に、夕星は少し困ったように、口角を上げた。

「憂杏も、葵王までは気が回らなかったのかね。葵王のほうが、心配だぜ。朱夏のほかに、目を向ける余裕もないしな」

そこまで言われて、葵は初めて自分の状況を知ったようだ。
ぽんと手を打つ。

「そうか。僕は今から、そういう相手を一から捜さないといけないんだな。それはそれで・・・・・・大変だなぁ~」

心底困ったように、葵が頭を抱える。
夕星は、意外そうに葵を見た。

「おいおい。その若さで、何言ってるんだ。元々葵王は、あまり世界を知らないし、いろんな国を知るためにも、外に出たほうが良いぜ。今内宮にいる貴族の娘との結婚というのは、俺はあまり勧めないね。もっといろんな人に会って、その上でこの国の重臣の娘を選ぶのなら、それでもいいが」