楽園の炎

「昔の話でしょっ!」

ばしんと葵の胸を叩き、朱夏はなおも赤くなりつつ訴える。
葵は笑いながら、からかうように朱夏の頭を撫でた。

「そんなことじゃ、夕星殿と初夜なんて、迎えられないよ?」

瞬間的に茹で蛸のようになって、朱夏は拳を振り上げる。
葵が慌てたように、話題を変えた。

「それに、ほら。宝剣。あれ捜すためもあって、泉に来たんでしょう?」

朱夏と葵のやりとりを、にやにやしながら聞いていた夕星は、振られた話題に顔を上げた。

「そうだな。ま、期待はしていないがね」

ちらりと水面に視線を落とし、再び夕星の姿は水底に消える。
葵は帯に手をかけ、朱夏を振り向いた。

「ということだから、僕も手伝うよ。朱夏も手伝ったら?」

帯を解く葵を、朱夏は頬を膨らませたまま睨んだ。

「もおっ。二人とも、子供なんだから。いいもん。あたしはフルーツでも、採ってくるから」

足元に脱ぎ捨てられている夕星の衣服を取り、葵からも帯をひったくると、朱夏は乱暴に近くの木にかけ、肩を怒らせて森の中に入っていった。