楽園の炎

「難しいねぇ。まぁ葵王はまだ、若いからなぁ。幼なじみの淡い恋が、そのまま愛に発展することもあろうがな。俺に嫉妬しないようじゃ、やっぱり朱夏は、妹以外の何ものでもなかったのかな」

「夕星殿は、ナスル姫のこと、愛しいと思いますか?」

葵の言葉に、夕星は頷いた。

「ああ。だからこそ、今のどろどろした兄弟喧嘩の中から、救い出してやりたい。守ってやりたいとは、常に思っていたよ」

「そうか・・・・・・。その気持ちは、まさに僕と同じだ・・・・・・」

息をつき、葵は空を見上げた。

「自分の気持ちも正確にわからないなんて、僕もまだまだだなぁ」

力なく笑う。
夕星はそんな葵に、目を細めた。

「この国は特に、あまり外との接点もないし。外からの賓客も、そうないだろう。もっとどんどん他の豪族と付き合うことだ。ま、あんまり勝手な外交は、ククルカン的にはまずいかもしれんが。ククルカン皇帝にでも頼んで、外交に加えてもらうといい。見聞も広がるし、出会いもあるぞ」

ぽんと背中を叩く夕星に、葵は笑った。
夕星の言うとおり、葵は外の国を知らない。

考えてみれば、この国から出たことは、昔にククルカン皇帝に、船に乗せてもらったときぐらいだ。
船に乗るのが目的だったため、その辺の海を流しただけで、どこかの国に行ったわけではない。
商人に身をやつして旅をしてきた夕星からすれば、信じられないことだろう。

「確かに。このまま王になるのも、どうかと思いますしね。もっと外の世界を知らないと。あなたのように、良い出会いがあるかもしれないし」