楽園の炎

---うう、抱き合ったことだってあるのに、何で今更、こんなにどきどきするのよ---

思いながら、ちらりと夕星を見てみる。
服についた砂を払う夕星は、そんな朱夏の気持ちも知らず、葵と何か笑いあっている。

そういえば、夕星と初めて一緒に馬に乗ったときも、胸元の素肌にどきどきした。

朱夏はちらりと、葵の胸元に目をやった。
わざわざ確かめなくても、先程稽古中に飛びかかった後、絞めた首を見るときに、朱夏は思いきり葵の襟を開いた。

何とも思わなかったなぁ、と、一つため息をついて歩き出す朱夏の後ろから、二人も歩いてくる。

「森の中は涼しいな。アルファルドは砂漠に囲まれてるのに、ここだけこんな緑があるなんて、珍しいよなぁ」

夕星が、頭上の木々を眺めながら、感心したように言う。
そして、ふと思い出したように、葵を見た。

「まるで、そなたのようだな。父上がよく言っていた。砂漠の宝石、アルファルド。その中でも、葵王は極上だとね」

「そんな風に仰られたら、ナスル姫様も、うっかり興味を示してしまうでしょうね」

葵が、苦笑いを浮かべる。
夕星が、ちらりと葵を見た。

「今回のことは、双方にとって残念な結果になったな。いや、そう思うのは、父上と兄上だけかな?」

すでに葵には、皇太子よりナスル姫とのお見合い中止の旨が伝えられている。
朱夏はその場にいなかったが、夕星が言うには、葵よりも皇太子のほうが、よっぽど気まずそうだったそうだ。
見合いの中止が決まったとはいえ、特に葵も気にすることなく、ナスル姫とも接している。