楽園の炎

少し離れたところにある植え込みに入り込むと、葵は足元を確かめながら、慎重に塀に近づいた。
足先が何かを探り当てたらしく、立ち止まるとしゃがんで、積もりに積もった枯れ葉を除けていく。

朱夏も手伝って葉っぱを取り除くと、くぼんだ地面が露出する。
続いて塀を押すと、その部分だけ城壁の石が動き、人が屈んでやっと一人通れるぐらいの穴が出現した。

「この歳になっても、まだこの穴を使うとはなぁ・・・・・・」

「あたしは今でも、たまに使ってるけどね」

しみじみと言う葵に、朱夏は軽く言い、夕星を振り返る。

「どうぞ。ここを通れば、森まですぐよ」

夕星はしげしげと穴を眺めた。

「なかなかな仕掛けだな。これは、二人が作ったのか?」

「いえ、昔にたまたま見つけたのですよ。ずっとあったものなのかは、よくわかりません」

へぇ、と呟き、夕星は屈むと、するりと穴を抜けた。
続いて朱夏が、穴をくぐる。
城壁の向こうに頭を出したところで、ひょいと伸ばされた浅黒い腕に抱き上げられた。

「よいしょっと」

朱夏を引っ張り上げた夕星は、自分の前に、とんと彼女を降ろした。
すぐにまた穴に向き直り、同じように頭を出した葵に手を差し伸べる。
大丈夫ですよ、と言いながら、穴から這い出る葵を横目で見ながら、朱夏は何故かどきどきしていた。

稽古場から、朱夏はいまだに、まともに夕星を見ていない。
顔は向けても、視線は微妙に外しているのだ。