楽園の炎

「いやぁ、いくら俺でも、朱夏相手には、遠慮無く打ち込めないよ」

葵は目を細めた。

「それを聞いて、安心しました」

にこりと二人に笑いかける。

夕星はちらりと周りを見、二人を促して場所を移した。
稽古場から出たところで、夕星は思い出したように顔を上げる。

「そうだ。森の泉に行こう」

いきなりの提案に、驚く二人を気にもせず、夕星はすたすたと歩き出す。

「森に行くの? でもそっち、門ないよ」

慌てて後を追いながら、朱夏が言う。
夕星が向かっているのは、確かに森のほうだが、外宮の一番外側とはいえ稽古場は王宮内なので、周りは城壁に囲まれている。
稽古場のほうには、門はない。

だが夕星は、足を緩めることなく言う。

「門はここからだと、ちょっと遠い。稽古場は森に面してるのに、一旦離れてから引き返すなんて、面倒くさいじゃないか」

言いながら城壁まで来ると、夕星は足を止めて壁を見上げた。
森に面している城壁の上には、木が生い茂っている。
きょろきょろと辺りを見回す夕星に、葵は頭を抱えた。

「・・・・・・城壁を越えるおつもりですね」

眉間に皺を刻んで言う葵に、夕星は、にっと笑う。
渋い顔をしていた葵だが、不意に同じように笑うと、夕星を追い越して少し横に移動した。

「じゃあ、ちょうど良い場所があるんですよ」

目配せされ、朱夏も笑った。
葵と朱夏が、よく使っていた抜け道だ。