「そうだな。でも、出したくないって気持ちもあるはずだぜ。四六時中、自分がついていられるなら、きっと父上は、そう簡単にナスルを離さないだろう。それぐらい、父上はナスルを可愛がってる。けどやっぱり、父上はククルカン帝国の王だからな。自分がべったり守れないとなると、やはり外の誰かに嫁がせるのが一番だろう」

「ナスル姫自身も、このままククルカンの宮殿にいれば、自分の身に危険が及ぶかもしれないと思ってるようだしな」

憂杏の言葉に、夕星は真っ直ぐに彼を見た。

「・・・・・・お前が出すか?」

先程の、ナスル姫と同じようなことを言われ、憂杏は驚いた。
朱夏も、いきなりの展開に、言葉を失う。

「俺は憂杏と一緒に行動して、それなりにお前の人とナリは、わかってるつもりだ。ナスルも、お前を好いている。考えてみれば、葵王よりも憂杏のほうが、安心してナスルを任せられるぜ」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。そりゃ俺だって、姫さんは可愛いよ。けど、どう考えたっておかしいだろ。俺みたいな親父に、あんな上品なお姫さんは、似合わねぇぞ」

狼狽える憂杏に、朱夏はうんうんと頷く。

「そうね。いくらナスル姫様が憂杏をお好きでも、傍(はた)から見たら、あり得ないカップルだわ。憂杏はユウのことを、変な趣味だって言ってたけど、ナスル姫様のほうが、よっぽどゲテモノ食いだわよ」