楽園の炎

「でも、葵王様が忍んで来られるかもしれませんよ?」

アルが、思いついたように言った言葉に、朱夏は笑い出した。

「葵にそんな度胸、あるわけないじゃない。あったとしても、返り討ちよ」

朱夏と葵の関係は、昔と変わらない。
剣の腕も、ほぼ昔と変わらず朱夏のほうが強いのだ。

「あ、そうそう。葵は? まだ会議漬けなのかしら。何か最近、王様らしくなっちゃって、なかなか会えないから、つまんないわ」

昔は毎日のように、剣の稽古や遊びなどで、常に一緒にいた二人だが、お互いそれなりに大人になり、それぞれ職務に伴う個々の仕事も出てくると、自然と会う時間も少なくなる。

特に葵は王子だし、高齢の父王の補佐を正式にするようになってからは、ほとんど会えていない。
葵付きとはいっても、朱夏は武官であって、文官ではないので、事務的な補佐はできないのだ。

「久方ぶりに、その葵様とお会いできるのですから、ちょっとは綺麗にしましょうね」

桂枝が、用意してきた淡い色の布を、朱夏に巻き付けながら言う。
朱夏の目が輝いた。

「え、葵に会えるの?」

「ククルカンより、お客様なのですよ。何でも、王族のどなたかが、直々にいらっしゃるとか」