楽園の炎

「そうそう。お前の婚儀のことも、考えねばならんな。ナスルの代わりに、お前が結婚することになるとはな」

皇太子の言葉に、夕星は、ああ、と少し身を乗り出した。

「俺はまだ、朱夏に返事をもらってませんよ。それより、ナスルが見合いを断ったとか?」

先程の感謝はどこへやら、‘馬鹿、話を戻すな’と、朱夏は心の中で毒づいた。
皇太子は頷き、しかし朱夏との会話で気が軽くなったのか、明るく笑う。

「そうなのだ。だが、朱夏殿のお陰で、それについては気が楽になった。そういえば、お前はナスルから、それを聞いたのか?」

「ええ。他にも何か、言いたげでしたけど。まぁ・・・・・・葵王には、ナスルはちょいと、荷が重いかもしれませんしね。良かったんじゃないですか?」

「そうかなぁ。飾り雛のようで、可愛い二人だと思ったのだが」

残念そうに言う皇太子は、ちらりと朱夏に視線を移した。

「朱夏殿。そなたは夕星に嫁ぐこと、異存はないのだろう?」

「ええっと・・・・・・。そ、そうですねぇ・・・・・・」

いきなり話題を振られ、朱夏は曖昧に笑いながら言葉を濁した。
結婚ということにまで、頭がついていっていないのが現実だ。

「兄上。返事を強要するようなことは、しないでくださいよ」

夕星が、朱夏の頭に、ぽんと自分の手を置いた。

「そうだな。折角お前が見つけた相手だ。じっくりと心を掴むが良い」

そう言って、皇太子は柔らかい目で朱夏を見た。