楽園の炎

「父上は、アルファルドを平定したときに葵王殿と会い、その美しさと遜色ない聡明さに惹かれ、葵王殿をことのほか可愛がっておられる。その葵王殿と、同じく可愛がっている娘が夫婦となれば、父上にとってこれほど嬉しいことはないだろう。だから、今回ナスルが葵王殿にお会いしたいと言ったときには、父上が誰よりも喜んでいた。しかしだな、強制するつもりは、父上だって露ほどもないのだよ」

はぁ、と曖昧な相づちを打ちながら、朱夏は皇太子がいかに気を遣っているかを思いやった。

立場は相当ククルカン皇家のほうが上なのだから、いくらククルカン側から申し込んだことであっても、ずばんと切ってしまってもいいはずなのに。
いかに葵のことを、可愛がっているかがわかる。

朱夏は少し考えて、口を開いた。

「今回のお見合いは、失敗だったということですね」

考えて言ったはずだが、皇太子は慌てたように朱夏を見る。
やはり、遠回しに話をするのは苦手だ。

「いやっ。失敗というわけではない。決して、葵王殿に落ち度があったとか、ナスルが葵王殿を嫌っているとか、そういうことではないのだ」

「ええ。えっと、先程ナスル姫様とお話させていただいた中で、ちょっとそういう話をお聞きしまして・・・・・・。えーっと、あの、失礼ですが皇太子様は、ナスル姫様より、どのようにお聞きしておりますか?」

ナスル姫の恋の相手が相手なだけに、皇太子になど、下手に話せない。
歯切れ悪く、朱夏は視線を彷徨わせながら尋ねた。

皇太子は、何となくほっとしたように、乗り出していた身体を、椅子に戻した。