楽園の炎

「また旅に出るって?」

香ばしいパンを囓りながら、憂杏が夕星に言った。
夕星はパンをスープに放り込みながら、ちょっと首を傾げる。

「旅に出るわけじゃないけど。まぁ近々、国に帰ることになるだろうな」

少しスープを吸ってふやけたパンをスプーンで掬いつつ、夕星が言う。
へぇ、と相づちを打ちながら、憂杏はちら、と朱夏を見た。

「あ、朱夏には求婚したんだ。そうだ、前に言ってた外套」

うっかり聞き逃すぐらいさらっと言い、夕星はひょいと立ち上がって、天幕の奥にかけてあった布を取り上げた。
地下牢で聞いたとおり、以前はただの布だったのが、フードができて、首元で留めることができる、外套になっていた。
それを、ばさ、と朱夏に被せる。

「うん、ぴったりだ。ここに使う留め具なんだけど、どういうのがいい?」

「あ、えーと。後であの箱の中、見てもいい?」

「うん。そうだ。折角だから、もうちょっと豪華な宝石にしようか」

スープを飲みながら、うきうきといった感じで語り合う二人に、憂杏は思わず声を上げた。

「待て待て待て~~ぃ。お前、今何て言った? 求婚? 朱夏にか? ん? 聞き違いか?」

興奮気味にまくし立てる憂杏に、夕星はきょとんとした。

「いや? ちゃんと炎駒殿にも伝えたよ。兄上もナスルもいたし」