楽園の炎

そうこう話しているうちに、夕星の店の前に出た。
先についていた憂杏が、隣の店の者と喋っている。
店の周りの者が、夕星の姿を認め、ばらばらと集まってきた。

「おお、どうしたんだ。仕入れかい?」

「店、たまに開けといたよ。ほったらかしだったら、あっという間に砂埃がたまっちまうからね」

口々に言う人々に紛れる夕星は、すっかり商人の顔で溶け込んでいる。

「ああ、ありがとう。そうだ、昼まだ食ってないんだ。何か、あるかな」

「ちょうど、パンが焼ける頃だよ。サージの店で、スープをもらうといい」

恰幅の良いターバンを巻いた女性が言い、一旦自分の天幕に引っ込んで、籠にパンを詰め込んでくれた。
その間に、憂杏がスープをもらいに、何軒か向こうの店に歩いていく。

「じゃ、とりあえず飯にするか。あ、後で皆に俺の店のモン、分けるから」

「おや、また旅に出るのかい」

市にいる者らは、ずっとそこにいるわけではない。
定期的に決まった場所で店を開く者もいるが、大抵の者は旅をしつつ商品を仕入れ、市で売って金を作り、また旅に出る。

憂杏もそうだ。
だから、旅に出る者を止める者もいない。
あっさりと夕星の言葉を受け入れ、皆散っていく。

スープの入った大きな壺を抱えて戻ってきた憂杏と共に、夕星と朱夏は天幕に入った。