楽園の炎

憂杏の背中を追いながら、そういえば夕星は、憂杏とはこの国に来る途中で会ったと言っていたことを、朱夏は思いだした。

「ねぇ、憂杏はユウのほんとの身分、知らないのよね? ユウはククルカンの隊の中でも、ずっと商人で通したの?」

それはそれで、よくばれなかったものだと思いながら朱夏が尋ねると、夕星は、まさか、と笑った。

「ナスルがいるしな。でも、初めっから潜り込んできたようなもんだから、徐々に増えていく商人らに紛れるようにすれば、抜けるのはわけなかったぜ。小規模の隊だったから、一応砂漠の途中でナスルがアルファルドの迎えと合流するまでは、ちゃんと見届けた。それからオアシスまで戻ったところで、憂杏と落ち合ったんだ。元々船の中で知り合ったんだけどね。いろいろ話を聞いているうちに、市に一緒に行こうって意気投合したんだ。で、一旦オアシスで別れて、俺はナスルを見送ったわけ」

「ナスル姫も、心細かったって言ってたよ。あ、もしかして、ナスル姫の言ってた‘じゃじゃ馬’って、ユウのことでしょ」

「あいつは育った環境が特殊だから、しっかりしてるというか。人を見つけるのが、抜群に上手いんだよ。まぁ・・・・・・寂しいんだろうな。昔から、必死で俺を、よく捜してたから」

皇太子の話では、夕星とナスル姫の育ての親であるメイズ妃は、夕星を異常に愛する反面、ナスル姫に対しては、必要最低限のことしかしなかったらしい。

「俺は・・・・・・宮殿にいるのが、ちょっと・・・・・・苦痛だったから、昔から結構いろいろ出歩いてたんだけど。考えてみれば、ナスルには可哀相なことだったな」

「そっか。そういえば、同じ年頃の友達がいないって言ってたわ。ユウとも、結構離れてるものね」

「でもあいつは、その分年上のほうが、合うみたいだぜ。葵王とは・・・・・・二つぐらいか? もうちょっと離れててもいいかもな」