楽園の炎

「何?」

「あたしはさ、ユウの前だと、どうしても弱くなってしまうみたい。何かね、頼ってしまうんだよね。こうやってるとね、安心するの」

きゅ、と抱きつく朱夏に、夕星は珍しく少し驚いたように、目を見開いた。
が、すぐに破顔し、ぎゅうっと朱夏を抱き返す。

「く、苦しいよ・・・・・・」

あまりの夕星の腕の強さに、朱夏が思わず声を上げた。
そのとき、いきなり二人の背後から、野太い声がかかった。

「おおっ? 何やってるんだ。こんなところで密会たぁ、隅に置けねぇな」

聞き覚えのある声に、二人が慌てて身体を離す。
そこには憂杏が、にやにやとまばらな顎髭をさすりながら立っていた。

「おいユウ。一体ここ数日、どこ行ってたんだよ。店もほっぽり出していなくなるもんだから、向かいの親父らも心配してたぜ」

「ああ、すまん。ちょいと身動きが取れない状態でね。あ、俺の店、まだあるのか?」

当然だろ、と言いながら、憂杏が市の先を見る。

「ごめん。まだ憂杏に言えてなかったんだ。あの後、あたしも宝瓶宮に監禁状態だったから」

「そうか。ったく、葵王もめちゃくちゃするよな」

小声でぼそぼそと言い合う朱夏と夕星を手招きしつつ、憂杏は市を、夕星の店に向かって歩いて行った。