楽園の炎

王宮から出ると、早速夕星は朱夏に、馬を呼ぶよう頼んだ。

「やっぱり、自分の馬がないのは不便だなぁ。朱夏の馬が軍馬で、ほんと良かった」

しみじみと言いながら、夕星は走ってきた軍馬に飛び乗った。
そして、いつものように、朱夏に手を差し伸べる。

が、朱夏は夕星の手を取るのを躊躇った。
格好は商人でも、夕星はもう『ユウ』ではない。
どうしても身分が気になって、自由に行動できない。

そんな朱夏を、馬上から夕星が、少し訝しげに見た。

「あのな。朱夏は俺が捕まってから、随分痩せたんだろ。俺が捕まったからだろ? ずっと泣いてたじゃないか」

「?」

いきなりのことに、朱夏のほうも訝しげな顔になる。

「でもそれは、商人ユウのためであって、皇子夕星のためではなかったの? 朱夏が好きなのはユウであって、夕星ではないってことか?」

反射的に、朱夏はぶんぶんと首を振る。

「どっちだっていいから、とにかく生きていてくれたことが、嬉しかったよ」

これまた反射的に口走ってしまい、自分の言葉に朱夏は慌てた。
本人を目の前にして、思いっきり恥ずかしいことを言ったように思う。