楽園の炎

夕星は、そんなナスル姫の頭をぽんぽんと叩き、軽くあしらう。

「ああ、すまん。ちょっと楽しかったんでね。折角朱夏と親しくなれたのに、身分を明かした途端、萎縮されると悲しいだろ」

「それにしたって! あの裁判だって、わたくしの到着が少しでも遅れていたら、お兄様、今ここにはいらっしゃらなくてよ!」

ナスル姫の言葉に、朱夏は血の気が引く思いがした。
確かに、あのときナスル姫が急いでくれなかったら。
回廊で、ナスル姫に会わなかったら。
夕星の処刑は、執行されていたのだ。

朱夏は、存在を確かめるように、夕星を食い入るように見つめた。
そんな朱夏の視線に気づかず、夕星は、どこかのほほんと言った。

「そうだなぁ。それはちょっと・・・・・・。うん、感謝してるよ」

ぽんぽんと、ナスル姫の頭を叩く。
ようやく、夕星はちらりと朱夏を見た。

「お前が、その娘を大事に想うのなら、悲しませるような真似は、するものではない。お前が生きておらねば、守りたい者も守れぬぞ」

皇太子の言葉に、夕星は唇を噛む。

「俺に、幸せになる権利があるのか・・・・・・わからないのです」

ぽつりと言った言葉は、夕星のものとは思えないほど、弱気な言葉だった。
が、あえて皇太子は、その言葉を鼻で笑い飛ばす。