楽園の炎

「まあぁ。お兄様ったら、危険を冒してまで朱夏のお部屋まで忍んで行くなんて。何てロマンチックなのかしら!」

ナスル姫が、顔の前で手を組み、宙を見つめて目を輝かす。
その後、飼い葉にまみれたんだけどな、と思いつつ、朱夏はちらちらと複雑な表情の皇太子と炎駒を盗み見た。

そのとき、不意に扉の向こうが騒がしくなった。
皇太子が顔を上げると同時に、扉が控えめに叩かれる。

「何だ?」

皇太子の声に、扉の前に控えていたであろう、兵士の声が応える。

「あの、夕星様がお見えです」

「入りますよ、兄上」

兵士の声に被る勢いで低い声が聞こえ、扉が開かれる。
頬に布を貼った夕星は、不機嫌そうに大股で部屋に入ると、皇太子の横に立った。

「お兄様ったら! そんなに朱夏にお会いしたかったのなら、わたくしにご連絡くださればよろしかったのに。そうだ! お兄様っ! 途中でいきなりわたくしの隊から離れて行かれて、こちらはどれほど心配したと思ってるんです!」

相変わらず輝く目で夕星に駆け寄ったナスル姫だったが、話の途中で夕星の行方を必死で捜していたことを思い出し、拳を握ってきゃんきゃんと吠えた。