楽園の炎

にわかには信じられないというように、やはりナスル姫以外は、ぽかんとしてしまう。

「だが、王者の気質を持ちながら、夕星には、決定的な欠点がある」

にやりと口角を上げ、皇太子は面白そうに皆を眺めた。

「大人しく玉座に座っていられないということだ」

これには、ナスル姫を含む全員が、深く頷いた。
皇太子は、満足げに表情を緩めたが、すぐに真剣な表情になって、朱夏を見た。

「もう一つ、奴の心に巣くう、死への願望だろうか。先にも申したように、夕星はアリンダに対し、どこか罪の意識を持っておる。己のせいで母親が息子に殺されるのを目の当たりにした衝撃は、生半可なものではなかったのだろう。以来、奴は命をおろそかにするようになった。いつ死んでもいいと思っておる故、無謀なことでも平気でできる。夕星の戦い方の最大の特徴は、死を全く恐れないということだ。その分強くあるのは確かだが、私から言わせれば、それは勇猛なのではなく、無謀なのだ。生きたいと思う気持ちは、死んでもいいという投げやりな気持ちよりも、強いものだ。それ故夕星は、アリンダには勝てない」

皇太子は朱夏をじっと見つめ、目を細めた。

「いつ死んでもいいと思っておる奴に、大事な者など、できるはずがない。あやつはまだ、商人として処刑されることを受け入れようとしていたが、私が思うに、あのまま処刑されておれば、きっと夕星は後悔したと思うが。違うかね?」

何と答えていいものか。
夕星の気持ちも、朱夏にはよくわからない。
朱夏は無意識に、首から下がった短剣に手をやった。