楽園の炎

ユウは朱夏を抱いたまま、牢でしたように、ぐい、と彼女の涙を拭った。

「悪かったな。身分を偽ったのは、まぁ・・・・・・行動しやすくするためだったんだが。そのお陰で、余計な心配をかけてしまった」

ユウの外套の中に、すっぽりと収まりながら、朱夏は潤む瞳でユウを見上げた。

商人だろうが、皇子だろうが、そんなことは、最早どうでもいい。
ただユウが生きて、自分を抱きしめてくれるのが嬉しくて、朱夏はユウの胸に顔を埋めた。

「全くだ。その娘だけではない。私やナスルも、どれだけ心配したことか。お前もそれほど大事に想う娘ができたのなら、死に急ぐような真似は、今後やめることだな」

皇太子の憮然とした声に、朱夏は我に返って慌てた。
だが、ユウは朱夏を抱く手を緩めない。

「メイズ殿が亡くなられたのは、お前のせいではない。お前がそんなことでは、みすみすアリンダの思惑に嵌ることになるぞ。その娘のためにも、気をしっかりと持つことだ」

皇太子の言葉に、ユウの朱夏を抱く手に力が入る。
朱夏は訝しげにユウを見上げた。

皇太子はユウから視線を切ると、上座の壇上から、皆を見渡した。

「皆、驚かせてすまない。この者は、私の弟。ククルカン皇帝の第三皇子、夕星(ゆうづつ)だ。宰相の地位に就けるも、手に負えない行動派で困っておる。今回のことも、こやつの軽はずみな行動故、ご容赦願いたい」

皇太子の説明に、皆のどよめきが一層大きくなる。
宰相といえば、皇帝・皇太子と共に、政治を取り仕切る立場である。
皇子というだけでも相当な身分だが、加えてそのように高い地位にあるとは。