朱夏はすぐに、両手いっぱいの果物を持って、戻ってきた。
いっぱいといっても、袋など持っていないので、たかが知れている。
だが男は、目の前にごろごろと転がされた果物たちを見て、呆れたように言った。

「こんなに一人で食えないぞ」

「あんたのだけじゃないわよ。あんたが食べてるの見たら、あたしも食べたくなっちゃったから」

しれっと言いながら、朱夏は短剣で皮を剥いては、洗った大きな葉っぱの上に乗せていく。

「これがパイン。ライチにグアバ。アボカドがあったから、これが一番お腹にくるかな?」

熱帯とまではいかないが、比較的温暖な気候のため、トロピカルなものが多い。

「ねぇ、あんたは、どこから来たの? 港ってことは、海から?」

ひとしきり皿代わりの葉っぱに剥き終わって、朱夏は自分もフルーツをつまみながら、話しかけた。

「うん。東隣の、コアトルの港からは陸路だけど。陸路は尻が痛くなるから、好きじゃないんだよね。自分の好きな速度で進めないしさ」