楽園の炎

「朱夏様。ユウとは、何者なのですか?」

アルが持ってきたお茶を手渡しながら、桂枝が尋ねた。
朱夏は小さく首を振る。

「知らない・・・・・・。憂杏と、市に行ったときに会ったの。あ、違う・・・・・・。その前に、森で会った・・・・・・。憂杏は、知り合いの商人だって言ってたけど。でも、違うと思う。わからないけど、きっとユウは、ただの商人じゃないわ」

あの息子は、と、憎々しげに思いながら、桂枝は相変わらず涙の止まらない朱夏の肩を撫でた。
でも憂杏は、長く旅をしているだけに、人を見る目も確かだ。

旅の途中の連れなど、一歩間違えば、身ぐるみはがされるどころか、命まで持って行かれることになる。
そのため、自然と人を見抜く力が養われるのだ。

憂杏が、今まで無事に旅を続けているのも、一つには連れを見る目があるからだと言える。
その憂杏の知り合いということは、信用に足る人物なのかもしれない、とも思えるのだが。

「ユウは・・・・・・あたしを助けてくれたのに・・・・・・。葵は、ユウを殺そうとしてる。ユウが葵を昏倒させたのだって、あたしのためなのに。暗殺しようとしたわけじゃないのに・・・・・・」

「・・・・・・とにかく、炎駒様に相談してみましょう。朱夏様は、今は少し、落ち着くことです」

桂枝は優しく朱夏の頭を抱くと、アルと代わって、部屋から出た。