楽園の炎

地下牢から宝瓶宮まで、外宮も内宮もお構いなしに、朱夏は全速力で駆け抜けた。
その勢いのまま宝瓶宮に飛び込むと、中にいた桂枝に飛びつく。

朱夏の姿が見えないので、おろおろしていた桂枝は、飛び込んできた朱夏に驚いて、怒る気も失せたようだ。

「どうなさいましたの。あら、まぁ・・・・・・」

腕の中の朱夏が泣いているのに気づき、桂枝は、よしよしと子供をあやすように、朱夏の背中を優しく叩いた。

「桂枝・・・・・・。あたしは、大事な人を、守れないかもしれない」

泣きながら言う朱夏に、桂枝は少し驚いた。
朱夏の言う‘大事な人’に、全く心当たりがないからだ。

葵だろうか、とも思ったが、初めて見る朱夏の様子に、頭の中で否定する。
このように朱夏が弱くなる相手など、桂枝の記憶にはない。

桂枝は、とりあえず朱夏を宝瓶宮内の、朱夏に与えられた部屋に連れて行き、落ち着かせるために、アルにお茶を入れるよう指示を出した。
その上で、自分も朱夏の隣に腰を下ろし、朱夏の肩を抱きながら、彼女が落ち着くのを待った。