楽園の炎

「初めに忍び込んだときより、随分人気(ひとけ)がなかったから、おかしいと思ってたんだ。葵王が、人払いをしてたんだな。おかげで難なく、部屋に辿り着けたわけだが」

「そうなんだ・・・・・・。ほんとにありがとう。でも、よく飛び込んで来られたね。中にいるのが葵とは、思ってなかったの?」

ユウは首を振った。
優しい瞳で、朱夏を見る。

「あの異様な人気(ひとけ)のなさと、朱夏の部屋から聞こえてきた物音で、何となく察していたが。ただ、やっぱり相手は王族だし、朱夏の気持ちもわからん。だから、下手に飛び込んでいいものかどうか、迷ったよ。でも朱夏が、俺を呼んでくれたろ」

言われた瞬間、朱夏は赤くなって俯いた。

何故あの状況で、ユウを呼んだのだろう。
あのときユウが近くにいたことなど、今知ったばかりだ。
普通なら、来るはずのない人なのに。

ユウの手が、俯いた朱夏の頬に触れた。

「あの一言で、迷いがなくなった。ていうか、朱夏に呼ばれた瞬間に、自然に身体が動いてた。朱夏の上にいる葵王を見たときは、力を加減するのに必死だったよ。感情のままに打ってたら、本気で殺してしまいそうだった」

朱夏は顔を上げた。
ユウの、漆黒の瞳が、真っ直ぐに見つめている。