楽園の炎

朱夏は意を決して、父にだけ、本当のことを話した。

葵が突然夜這いをかけたこと。
必死で助けを求めた朱夏を、少し前に出会った、商人であるユウが助けてくれたこと。
ユウは自分を攫ったわけではなく、葵の元から逃げたいと言った自分を連れ出してくれただけということ。

葵の、朱夏を妃に迎えたいと思ってくれていた気持ちや、あくまで葵を拒んでしまった自分の気持ちも、素直に全て語った。

炎駒は黙って朱夏の話を聞いていたが、初めて見る儚げな娘の様子に、やはり宝瓶宮に来るよう勧めた。

確かに炎駒は葵の臣下だが、葵の父王の、一の側近である。
臣下の中では、最も高い位だ。
『葵王様も、ご自分の父親の側近を務める私には、そう簡単に無体な命令はできないだろう』と言う炎駒に、なおも朱夏は不安そうな目を向けた。

相当心に傷を負ったであろう娘を、炎駒は痛ましい思いで見つめていた。
炎駒は桂枝を呼び、今後朱夏は、宝瓶宮に移ることを告げた。
その上で、できる限り朱夏の傍にいるよう命じる。

アルも朱夏付きだが、ただの侍女なので、立場が弱い。
異国人なので、葵に意見することも許されない。

だが桂枝なら、炎駒に仕えていたし、王の信頼も篤い。
葵も世話になったし、遠慮もあろう。
万が一、またこのようなことがあっても、桂枝なら何とかできるかもしれないという考えからだ。

そういうわけで、朱夏はあの後、宝瓶宮に移ったのだ。