再度、ノックをしてみる。 「──やっぱりいない、か」 もしくは、居留守を使っているかのどちらかだ。 「……よし、」 でも、ここまで来たからには、おいそれと尻尾を巻いて戻るわけにはいかない。 罪作りなほどに真っ青な青空を一度だけ眺め、小さく深呼吸をして、私は元は事務所として使われていたであろう、その建物の唯一の扉に手をかけた。