「なんで止めるんだ?」
「なんでって、」
夜十が口ごもる。
きっとまだ、彼女に対する想いを明確に理解していないのだろう。
「これは俺の依頼だ。邪魔するなよ」
だからそんな風に言うのだろう。
「バカじゃねぇの」
口をついて出てきたのはそんな言葉。
こんなに、殺してくれって言ってる奴なら。
「殺す気があるんなら、こんな奴とっくの昔に殺してるだろ」
俺だってそうだよ。
殺す気があるなら、満希に隙はいくらでもあったはずだ。
だけど殺さなかった、殺せなかった。
彼女の首を絞める俺の手を振り払い、夜十が俺を睨みつける。
なんて人間らしい顔なんだろう。
俺は満希に対して、そんな顔ができているだろうか。
俺は前髪を掻きあげて高らかに笑う。
泣きたい気分だった。
泣いてしまいそうだった。
「こりゃあいい」
全部バカだ。
俺も、お前も。


