愛してるさえ、下手だった



満希がぽかんと口を開けて俺を見つめている。

その両目を涙が縁取っていく。

作り笑顔も何もない、そのままの満希がそこにいた。
やっと、素顔を見せてくれた。

恋人に捨てられた満希と、恋人を捨てた俺。
その傷は対極にあるように思えて、とても似ている。


抱える傷の重さは、変わらなかった。

「本当に…?」

まだ信じない満希に、俺はもう一度ささやく。

「愛してる」

口にするたび、過去の傷がえぐられていくようだった。
けれどその痛みすら、愛しく感じてしまう。

生きているということを痛感させてくれる。


俺たちは互いのことを何も知らない。

けれど俺にも誰かを愛する心は、まだ残っている。
有芽が残してくれたあたたかな気持ちは、俺の中に確かにある。