こいつ、おかしいんじゃないか? 男は眉間にしわを寄せ、その少年を見つめた。

 どう見積もっても、男の外見や雰囲気は良いとは言えない。実際、呼び止められた少年以外の生徒たちは男の顔色を窺いながら静かに通り過ぎている。

 その表情は一様にビクついたものだ。

「おう匠(たくみ)。遅刻すんなよ~」

「うん」

 少年の名前だろうか、未成年にしてはややガタイの良い男子生徒が匠と呼ぶと少年はしれっと応えた。

 この状況からして、俺がこいつのお友達なんて思うはずがねえよな。男は予想外の光景に唖然とした。