「おい、ヤバいんじゃね?」

 仲間の一人が小声で隼人の背中をこづいた。

 他の仲間二人も顔を強ばらせている。しかし、親がそうだからといって子供まで強いとは限らない。

 そもそも、親も現役時代に強かったかどうかなんていうのも解らないのだ。とはいえ、この仙人じみた雰囲気には警戒せざるを得ない。

「気になさらず、続きをどうぞ」

「出来るかぼけえ! 覚えてろよ!」

 隼人はしれっと発した匠に悪態を吐きつつ、指を差して仲間たちと共に足早に走り去った。

「何を覚えろというのだろう」

 匠は小首をかしげ、慌てるように遠ざかる後ろ姿を見送る。

 彼にとってみれば巻き込まれたようなものだが、気にしている素振りはまったくない。それどころか、どこか面白がっている風にも見える。

「さあ~」

 そうして二人は、匠の家に向かうため、のんびりと歩き始めた。