ド――――――――ン……。


結界の中の空間が地震の時のように揺れて、鈍く大きな音が響く。

つい先ほどまで辺りを覆っていたまがまがしい気が消えて、ほっと息をつきかけた時…


「あっ…!」


幼なじみの斜め後ろに何かが接近しているのに気づいて、思わず大きな声を出す。


「明(あきら)っ!後ろ!」


私の声に良い反応をしてバッと振り向いた明は、そのまま印を結んで大きく叫んだ。


「禁!」


ぶわっと見えない壁が私達のまわりを囲み、接近していた妖怪をはじき飛ばす。


「我が眼前の悪しきもの、すべてを浄化し無へと返せ!急急如律令!」

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


続けて放った術を正面から受けた妖怪は、叫び声をあげて消えていった。

この場を浄化して結界を解いた明が、くるっとこっちを振り向く。


「早和っ!さっきのナイス!助かった」


笑いながら言うから、ドキッとしちゃった。

明は、一言でいえばかっこいい。

そして私は、小さい時から明が好き。

こんな条件がそろってドキッとしない方がおかしいよ。

手早く後始末をして前を歩き出した明をちらっと見上げる。

どうしよう…。なんか顔が熱くなってる気がする。

内心焦っていると、何を感じたのか明が不意に振り返った。

そして、じーっと見てくる。


「な、なに?」


なんだか居心地が悪くてそう言うと、明はニヤリと笑った。

え、なにその笑い…。


「そんなにして欲しいなら言えばいいのに」