私はこの人に、とことん惚れている。翔を好きになったのは、今から一年前の事。
友達から借りていたピアスを無くして、月明かりだけが頼りな薄暗い公園の中、這いずり回る様にして私は探していた。
見つからないかも知れないという焦りに加えて、誰もいない夜の公園。女の子一人では、変な人に絡まれないかという恐怖の中、誰かが声をかけてきた。
背が高く、短い髪の毛をぴんとたたせた、ラグビー選手の様な男の子。
学習塾帰りの同じ高校の、一年二組の夏川翔だった。

「絶対、見つけられるさ。俺も手伝うから。」

そう言って勇気付けてくれた時は、それまで夜の闇で隠されていた、難問を解くための鍵を発見した心地だった。

-暗い、奈落の底に落ちたとしても、この人なら手を差し伸べて私を救ってくれる-

そうして、そこから学校内でもちょこちょこ会話するようになり、いつしかそのまま恋人同士になっていた。

-でも、あなたに告白された時に、オッケーを出した最大の理由が、あなたの持つ頼もしさよりもむしろ、あなたから感じられる、心地良い「匂い」だったって言ったら、やっぱり翔、あなたは変な顔をするのかしら?-