「君が本当に気を付けないといけないのは、純粋な麝香だけだ。麝香鹿から取れる、純粋な麝香。これはある意味、女性を捕らえて放さない、フェロモンの様な物らしいからね。
その変態ジジイが持っていた匂い袋の麝香は、純粋な麝香に違いない。
…ねえ、一つ聞きたい事があるんだけれど、良いかな、真白?」

「え、ええ…」

「君は、俺のどこを認めてくれて、俺の告白を受け入れてくれたんだろう?」

「えっ?いきなり何を…それは、あなたの誠実で頼もしい…」

「…と、言うのは表向きで、間違ってたらゴメンな。やっぱり俺も、君の持ち物と同じで、『匂い』で選ばれたんじゃないか?」

その言葉を聞いて私は、口から心臓が飛び出るかと思うほど、ひどく驚いた。
その表情は、隠しきれなかった。

「…やっぱりそうか。悔しいな。これじゃあまるで、その変態ジジイが俺達のキューピッドみたいじゃないか。
しかも、その変態野郎の血まで受け継いでいるとなると、さすがに気が狂いそうになるぜ…」