( @:SS )




目の前に横たわるのは、冷たくなった、愛しい彼女の姿…。彼女は昨日、自らの手で命を絶った。

ふと思い出す、秋の終わりのけだるい夕暮れ。憂いを帯びた目で彼女は、

「ごめんね…。私、死ぬことに決めた。」

そう、僕に告げた。

その言葉が本気だっただなんて、誰が想像しただろう。何が彼女をそんなに追いつめたのかは、僕にはわからない。まぁ今更、知る術もないけれど。

僕の脳裏に焼き付いている、あの日の彼女の後ろ姿が、今はもう、涙で滲んで輪郭のない幻のようで…。


「ねぇ、何で…?
何で君は、死を選んだの…?」


その問いに、答えが返ってくることはもう無い。最期に僕に向けた“ごめんね”の真意も、もはや知ることはできない。

精気のない白い頬にそっと触れれば、伝わってくる無情な冷たさに、ぎゅっと唇を噛みしめた。

―――ねぇ。
心から、君を愛してたんだよ、僕は。
失ってわかっても、今更どんなに思っても、もう、君には届かない。伝わらない。


「気づくのが、遅すぎたね。」


崩壊は緩やかに、終焉は突然に、何もかも消し去って、僕からすべてを奪っていった。


『貴方は強いもの。だから、貴方は貴方らしく、変わらないでいてね。』


いつか彼女に言われた、そんな言葉が頭の中で反芻する。

でもさ…。僕の、どこが強いというの。
君がいなくなっただけで、こんなに不安定になる僕の、どこが…。

空っぽになった僕なんて生きていける訳ないのに、失した心の半分を探して彷徨うくらいなら、終わりは君から欲しかったのに。

悲しみなど残して去るのなら、愛する君の手で最後に、僕を殺して欲しかった。





  僕は君に殺して欲しかった


  ( 君なしで僕は )
  ( もう、生きてはゆけない )