( @:カオス的なSS )



“死にたい”―――…

なんて言ったら、彼はどんな顔をするのだろう。

“バカなことを言うな”と、
私を引き留めてくれるだろうか。

それとも、“勝手に死ねば”と、
冷たく言い放たれるのだろうか。

否、微かな動揺さえも表さないであろう彼の無表情な顔を想像し、思わず苦笑した。

第一、私が今日この世に別れを告げたとして、明日には何の変化が起こるというのか。

たくさんの個体が存在し、それで成り立つこの世界の中、一個体にしかすぎない私が死んでも、変わることなどありはしないのだ。

何事もなかったかのように時は巡って、いつか、私が存在したという事実さえ周囲から忘れられてしまうのだろう。

―――あぁ、なんてくだらない。


「ねぇ、私が死んだらどうする?」


それでも。
心底くだらないと思いつつも、そう彼に問いかけてしまうのは一体何故なのか。

私は彼に悲しんで欲しいのか、はたまた喜んで欲しいのか、自分自身でさえ真意はわからないけれど。


「お前が死んだら…?わかんねぇよ、考えたこともねぇ。ただ…」

「ただ…?」

「少なからず、喪失感は生じるんじゃね?何かが欠落したような、深い悲しみと一緒に。」


相変わらず無表情に言い放たれた言葉に、少しだけ、まだ彼の傍で生きるのも悪くないな、そう思えた。





  くだらない世界


 ( それでもきっと、)
 ( 彼は私のために )
 ( 悲しんでくれる )