( @:SS )



好きで好きで好きで。
誰にも負けないくらい、大好きで。
それなのに何で?どうして…


「別れねぇか?」


別れの言葉はあまりにも突然、確かな理由のわからないまま、私へと告げられた。

彼の伏せられた目が、それが冗談なんかじゃないことを私に悟らせる。でも、


「冗談でしょ。何、いきなり。」


そう返さないではいられなくて。
引き攣る頬で必死に笑い、泣くのを必死に堪える。刹那、目線を上げた彼の瞳がゆっくりと私を捉えた。


「冗談でこんなこと、言う訳ねぇだろ。」


私を見つめる切れ長な瞳。紡がれた言葉に、堪え切れず涙が頬を伝う。


「…私を、嫌いになった?」


掠れた声でそう問いかければ、再び彼の視線は私から外される。
――そして。


「ちげぇよ。ただお前を幸せにする自信が、俺にはねぇんだ…」


紡がれた言葉は語尾が弱まり、最後の方はほとんど聞こえなかったけれど。微かに聞こえた言葉に、ちくりと胸が痛んだ。


「…そんな自信、無くていい。」

「……」

「私はあなたが傍に居てくれるだけでいい。だから、別れるなんて言わないで…。」


あなたの隣が、私の幸せだから。

黙りこくる彼にそう告げるとともに、ついに涙腺は崩壊。次から次へと溢れる涙を止める術など知らなくて、ぎゅっと唇を噛み締める。


「……わりぃ。もう、決めたんだ。」


そんな私の頬に優しく触れた、彼の温かい手。そっと涙を掬い、短く触れた唇の温もり。そのまま私は、彼の腕に抱きしめられた。

…馬鹿だなぁ、あなたも。

何でこんなことするの。最後の最後くらい、冷たくあしらってほしかった。そんな優しさに触れたら、余計別れが辛くなるのに。


「……じゃあな。」


離れた体、向けられた背は私との決別を強く物語っていて。もう私があの腕に抱きすくめられることはない、もう彼の隣に私の居場所はない。頭に浮かぶ彼の笑顔が、私の胸を締め付ける。

残された私は一人、体に残る温もりをそっと抱きしめた。





  愛ゆえに


  ( 君を傷つける前に )
  ( 君の前から去ろう )