( @:SS )



「明日、世界が崩壊するとしたら、キミはどうする?」


ある日唐突に、真面目な顔してそんな突飛な問いを投げかけてきた彼に、私は仕事の手を休めた。


「どうしたの、いきなり。」

「別に。ただ僕が思うに、世界の崩壊は突然で、あまりにも呆気なくて。素晴らしくくだらないことだと思うんだ。」

「だから…?」


少し矛盾をはらんだ彼の言葉に、思わず顔をしかめる。
そんな私に構わず、彼は続けた。


「だからこそ、だよ。
明日に迫る“終わり”に向け、キミは“崩壊を防ごうと足掻く”のか、“終わりを受け入れ最期の1日を過ごす”のか。」

「あなただったらどうするの?」

「僕かい?…さぁ、どうだろう。」


結局、あなた自身も結論にいたっていないのね。

“足掻く”か“受け入れる”か…

二つの考えを頭に浮かべながら、無意識にくわえた煙草に火をつける。揺らぐ紫煙を見つめながら、私は小さく笑みを零した。


「ふふふ。くだらないわ。
そんなの、考えるに及ばないことよ。」

「どうしてだい?」


どうして、だなんて…。
そんなの決まってるじゃない。

不思議そうに私を見返す彼に、私はもう一度微笑み、言葉を放つ。


「足掻こうが受け入れようが、私があなたの傍にいることに、変わりはないもの。」


細くたなびく紫煙の向こう、彼も優しく微笑んだ気がした。





  世界の崩壊


  ( たとえ世界が終わっても )
  ( 私は彼と生きると決めた )