「瑞希…」

「はい?」

「キ、…」

“キスしたい”と言いたい達也だったが、自分を信頼しきったような、あどけない表情の瑞希を見ていたら、罪悪感を覚えて言えなくなってしまった。

「き?」

「キ…、キッチン。うん、キッチンなんだよね」

「キッチン?」

大きな目で不思議そうにする瑞希がまた可愛くて、達也は慌ててソファーから立ち上がった。

「キッチンに食い物が何もないからさ、俺、ちょっと買い物して来るよ」

「あ、はい」

「おまえも一緒に行くか?」

「行きたいですけど、この格好じゃちょっと恥ずかしいです…」

瑞希は学校の体操着である、上下エンジのジャージを着ている。

「気にすんな、って言いたいところだけど、確かにそうだなあ」

(どうするかなあ…)と考えた達也だが、すぐにあるアイデアが浮かんだ。

「買えばいいんじゃねえか?」